![]() |
ここに掲載されている原稿は、東海ラジオで伊勢茶推進協議会が放送している緑茶といひとときを編集して公開しています。
回 数 項 目 | 回 数 項 目 | |
第 1回 お茶アラカルト篇 | 第27回 お茶の歴史 | |
第 2回 カテキン篇 | 第28回 西洋人とお茶の出会い | |
第 3回 緑茶のおいしい飲み方篇 | 第29回 交流の手立て | |
第 4回 緑茶とダイエット篇 | 第30回 宣教師と茶の湯 | |
第 5回 伊勢茶の歴史篇 | 第31回 千利休 | |
第 6回 煎茶篇 | 第32回 茶の湯の魅力 | |
第 7回 出がらし篇 | 第33回 アヘン戦争 | |
第 8回 緑茶の種類篇 | 第34回 アメリカ独立戦争 | |
第 9回 たべる篇 | 第35回 ボストンティパーティ | |
第10回 カフェイン編 | 第36回 お茶の発明品 | |
第11回 保存篇 | 第37回 明治時代の茶事情 | |
第12回 大福茶篇 | 第38回 緑茶の今 | |
第13回 茶産業篇 | ||
第14回 おさらい篇 | ||
第15回 扇風機のナゾ篇 | ||
第16回 日本のお茶、世界のお茶編 | ||
第17回 茶柱編 | ||
第18回 急須の穴編 | ||
第19回 茶がらの利用法編 | ||
第20回 お茶の値段編 | ||
第21回 妊娠とお茶の関係 | ||
第22回 大谷嘉兵衛大いに活躍編 | ||
第23回 お茶摘み体験会編 | ||
第24回 お茶でないお茶編 | ||
第25回 深蒸し煎茶・かぶせ茶編 | ||
第26回 お茶は安心編 |
緑茶とひととき。この番組は三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りいたします。お茶は日本人にとって欠かせない飲み物となっています。その注目度は食生活だけでなく伝統文化・健康・美容など広範囲に及びます。この番組ではそんなお茶にまつわる話題をあなたに提供していきます。 注:本文内の宮は宮地さん、神は神野さんです |
第1回 お茶アラカルト篇 | ||
![]() |
お茶の名前をどれだけ知っていますか? う〜ん、緑茶でしょう。それからウーロン茶、あとは紅茶もお茶の一種なんでしょう? そうですね。いまいった緑茶とウーロン茶、紅茶は同じお茶の葉を原料としているんです つまり、同じお茶の葉から作ることができるんですよ それではどうして違うものになるかといえば、緑茶の場合は、摘んだお茶の葉をすぐに蒸してから揉んで、乾燥させるという、お茶本来の良さを活かした工程で生産されるんです それだけ自然のお茶の葉の成分に近いんですね。 それに対して紅茶の場合は、摘んだお茶の葉をまず萎れさせてから揉んでお茶の葉にわざと傷を付けさせるんです。これはお茶の葉の酵素が働きやすいようにして発酵作用により色や香りを変化させるためなんですね。 紅茶の香りを楽しむ方も多いんじゃないでしょうか。 ウーロン茶の場合は緑茶と紅茶の中間であるというと分かりやすいんじゃないでしょうか。ちなみに、この発酵作用の関係でビタミンCはほとんど分解されてしまうんです。だからウーロン茶や紅茶からはビタミンCを摂ることはできないんですよ。 ぼく、これからは紅茶飲むときはレモンティーにします。 さて、日本でお茶の生産量が多いのはどこだか知っていますか? 静岡とか京都とかですか? さすがっ。一つは当たっています。なんといっても静岡県がトップです。次いで鹿児島県そして第三位がこの番組を提供して頂いている伊勢茶の生産地である三重県なんです。 わー、すごいがね。 京都なんかにも特色のあるお茶の産地は多いんですよ。お茶は北海道などの地域を除いて全国で栽培されているんですよ。それだけにお茶は日本人にとって欠かせないものなんですね。これからもそんなお茶の話題をお話していきますから期待してくださいね。 |
|
第2回 カテキン篇 | ||
![]() |
緑茶と聞いて何を思い浮べますか? そうですね、お茶は低カロリーだから、ダイエットにはいいですね。茶道などの伝統文化としても注目されていますよね。 最近特に注目されているのは健康への効用なんです。お茶に関する研究が進んで、お茶の成分や体への効用が解明されてきているんですよ。例えば、風邪などに効くといわれているビタミン類。コーヒーにも多く含まれているカフェインやポリフェノールなどのカテキン類や各種ミネラルやアミノ酸といった、いかにも体に良さそうな成分が含まれているでしょう。 カテキンというのは聞いたことがありますよ。コンビニのジュースコーナーで”カテキン”と名前の入った飲み物がありましたよ。 ところでカテキンってなんなんですか? お答えしましょう。カテキンはお茶の主成分で最近流行しました赤ワインにも多く含まれる薬効性の成分なんです。 カテキンの体への効用としては動脈硬化の予防、こわーいガンの予防、以前からも知られていた食中毒菌やOー157菌に対する効菌作用、まだまだあります。虫歯予防や心筋梗塞の予防にも有効なんですよ。昔からお茶は不老長寿の薬としても認められていましたが、現代になってその事実が徐々に明らかになっているんですね。昔の人は、経験的に知っていたんですね。カテキン以外にもお茶には体に良い成分がたくさん含まれているわけですが、そんなお話しやあんなお話しをこれからもご紹介していきたいと思います。 あんな話っていうのが気になるね。 おいしいお茶の入れ方とか成人病予防とか老化防止とか・・・ 老化はちょっとわたしには早いんじゃないの! 聞こえてしまったようですね。 |
|
第3回 緑茶のおいしい飲み方篇 | ||
![]() |
突然ですが自分でお茶をいれたことありますか? どこの家庭でも一緒だと思いますけど、ほとんどの場合はうちの嫁がやってくれますからねー。でもぼくだってできるよ。急須にお茶の葉をいれてお湯を注いで、できあがりでしょう?簡単だがね。 そうです。お茶は身近な飲み物だけに、だれでも手軽にいれて飲むことができるんです。でもね、いれかた次第で、ものすごくおいしくなったり、逆に味も香りもなくお茶の葉の良さが出ないようなお茶にもなってしまうのですよ。 へー、じゃあさっそく教えて下さい。 まず肝心なのは、お茶の葉の量とお湯とのバランスです。緑茶の種類によって、差はありますが、基本的には皆さんが思われているよりも、多めにお茶の葉をいれるか、お湯の量を少なくしてみてください。人数分以上のお湯を入れてしまわないようにしましょう。 お湯が多いほうがたくさん飲めてうれしいじゃないですか? そういうものじゃないんです。また、このとき使うお湯も大事ですよ。お湯は一回沸騰させたものをあらかじめ人数分の茶わんに注いでおきましょう。そうすればお湯の量がきちんと量れますし、なによりお湯を冷ますことができるんです。お湯の温度が高すぎるほど渋みや苦みの成分が出てしまうので、ぜひこの方法をお薦めします。お茶の葉の量とお湯の温度を適切に保てば、うまみと渋みが調和したおいしいお茶になります。例えば煎茶の場合は、5人分で10c(おおさじ2杯)のお茶の葉に一人あたり90ミリリットルのお湯を注いでください。おいしく飲める温度は50度〜65度くらいです。 さて、おしゃべりなんかしながらお茶がよくでたら茶わんにお湯を注ぎましょう。お湯を注ぐ量は均等に廻しつぎして、みなさんもご存じだと思いますがお湯は最後まで絞り切ってください。そうすれば次にいれる二煎めのお茶も渋みがあまり出ずにおいしく飲めるんですよ。いよいよ茶わんにお茶が注がれました。あとは作法を楽しむのもよし、ふうふう言いながら飲むのもよし、お茶を飲んであなたのひとときを楽しんでください。 |
|
第4回 緑茶とダイエット篇 | ||
![]() |
女性が一番気にしていることってなんだか分かる? それは、美容でしょう。雑誌なんかにもダイエット特集だとかたくさん載ってるし、目の色変えて読んでるの見たよ。 そうなのよ。すごく気にしているのよ。ほら、この間なんか500グラムも増えちゃったのよ・・・。 そんなこといっとったら他の女性はどうなるの?『あんた、どうしてそこまでほっといたの?』って言いたくなる人もいっぱい、いるんだよ。 ダイエットなど悩みのある方に、きょうの話は聞いてもらいたいですね。ダイエットで重要なことってわかりますか。 まず、食事を制限することだね。それからもちろん運動をしなければいけませんよ。 そうですね。断食するのはいけませんがちょっとのどが渇いたからって甘い飲み物を飲んだりして余分なカロリーをとっていませんか。?その点お茶にはほとんどカロリーがありません。その上、お茶の成分にはヘルシーなダイエットをするために大変効果のあるものが含まれているんですよ。先程、おっしゃったようにダイエットに運動はつきものです。しかしやせたい一心からオーバーワークになってしまうことに気をつけなければいけません。著しい運動をすると体内に活性酸素等が生成され細胞などに害を及ぼします。 それに対してお茶にはカテキンをはじめとした抗酸化作用をもったポリフェノール類が多く含まれており、これらの障害から細胞を守ってくれるのです。 また、若さのためには体だけでなく心の充実も大事ですね。お茶にはコーヒーなどにも含まれるカフェインが多く含まれており、集中力の増強や疲労回復にも有効で、その他にもリラクゼーションに効果のある成分も含まれているんですよ。 お茶を飲みながら若さを保ちダイエットもできる。女性に限らず老若男女問わずお薦めしたいですね。ダイエットのおともに緑茶は最適なんですね。 |
|
第5回 伊勢茶の歴史篇 | ||
![]() |
今週は少し格調の高い歴史の話をしましょう。 ぼくも歴史の話は好きだから、伊勢茶の歴史物語なんて聞かせて下さいよ。 以前お話ししたように三重県で作られる、伊勢茶は静岡、鹿児島に次いで全国第3位の生産量を誇っています。 どうして三重県がそこまでのお茶の産地になったんですか? お茶は中国から伝えられたことはよく知られていますが、伊勢茶は今から約1,000年も前に四日市の飯盛山の玄庵という僧侶が、真言宗の空海直伝の製茶法をこの地に伝承したと言われています。 さらに鎌倉幕府のできる頃には、茶の薬効性を著した喫茶養生記で有名な栄西禅師が宗からお茶の種子を持ち帰り伊勢の川上に植え、それ以来、伊勢茶は各地で生産されるようになりました。 三重県の風土がお茶作りに合ってたんですね。 時は流れ、幕末から明治初期、四日市の常願寺の住職の中川教宏という人がお茶の生産を奨励して1つの産業として形成されるんです。そしてこの頃、日本は、今では考えられないんですが、外国にたいして輸入超過の貿易問題が深刻になっていたんです。そんな中、飯高町出身の製茶王大谷喜兵衛の尽力によりアメリカなどに大量に伊勢茶を輸出するようになり、伊勢茶が海外貿易の振興に大変貢献したんです。 アメリカ人も当時はお茶をたくさん飲んでいたんですねー。そんな歴史に育まれた伊勢茶は豊かな自然のなか、北勢・中南勢・志摩・伊賀などそれぞれの産地の特性を生かしたお茶が作られ、毎年開かれる品評会でも優秀な成績を修めています。 そんな伊勢茶に興味をもたれた方は三重県飯南町のリバーサイド茶倉に行ってみてはいかがでしょうか。豊かな自然の茶園と清流に囲まれた施設内に茶業伝承館がありまので伊勢茶の歴史やお茶の作り方なんかも見学できますよ。つい先日も伊勢茶推進協議会の主催による茶摘体験会が催され大変好評だったんですよ。ぼくもいきたかったなー。 |
|
第6回 煎茶篇 | ||
![]() |
さて、お茶は、緑茶・ウーロン茶・紅茶に分類されることは以前にもお話しましたが今回は緑茶の種類について少しずつお話します。 そうだね、日本のお茶といってもいろいろありますもんね。煎茶だとか、抹茶だとか、玉露というのもありますね。 その通り、その他にも番茶やほうじ茶、変わったところでは、ぼてぼて茶とか、ごいし茶があるんですが、今回は緑茶の代表ともいえる、煎茶についてお話します。 伊勢茶のなかでも煎茶は生産量が一番多く、お茶の葉を摘んでからすぐに蒸します。その後揉んでから乾燥させて細長く撚ったお茶です。お茶の葉は5月の八十八夜前後に摘まれたものが、一番茶で、7月に二番茶、10月頃には、秋番茶が摘まれます。 煎茶としてお店に売られているのは、一番茶や二番茶で爽やかで香ばしい香りとマイルドな味わいと程よい渋みが調和しています。二番茶は一番茶に比べて渋みが強くなっています。 良い煎茶の選び方はあるんですか? まず、色で判断してみてください。早く摘んだお茶ほど鮮やかな濃い緑色をしており、遅く摘んだものほど黒ずみます。また、形は葉がよれた形が固く細いかんじで、品質が均等なものが良品です。また、お茶の茎や粉が混ざってないものが高級なので、今度お茶を買いに行ったら注意して選ぶといいですよ。 なるほど、お茶の値段の違いもそういうところからきているんですね。 そうして選んだ煎茶は和食なんかにあわせて飲むのがいいんじゃないでしょうか。また、スポーツの後なんかにぜひお薦めしたいのが 冷やし煎茶です。3人分の場合、煎茶を急須に15cほどいれ、茶わん一杯分のお湯を注いでください。 3人分で茶わん一杯のお湯では足りないんじゃないの。 まだ続きがあります。その後氷をいっぱい加えて、更に茶わん一杯分のお湯を注ぎ、3〜5分くらい浸してからゆっくりと茶わんに注いでください。大体3人分の冷やし煎茶が出来上がります。驚くほどまろやかな風味の味わいで気分も爽快ですね。 時間をかけてゆっくりお茶を出すんですね。ぼくも、今度参考にさせてもらいます。 |
|
第7回 出がらし篇 | ||
![]() |
最近寒くなってきましたけれども、そんななかで飲むお茶は、心も体も暖まりますよね。 そうですね、これからの季節は、日毎にすずしくなり風邪をひきやすくなります。あったかいお茶を飲めば体も温まり、さらにビタミンも摂ることが出来ます。また、お茶には殺菌作用もあるので、うがい代わりに外から帰ってきたら緑茶を一杯。これをお勧めしたいですね。 例えば、お茶は飲むということ以外にも何か利用方法はないんですか? 今回はリスナーの方からお茶の出がらしの利用法についてのお問い合わせがあったので紹介したいと思います。 お茶の出がらしは捨てるだけですもんね。何か教えてください。 寒くなったという話が出ましたので、今回は緑茶ぶろをお勧めしたいですね。 どういう効用があるんですか? まず、緑茶ぶろには肌の汚れや脂分を落としてくれる効果がありますので皮膚のトラブルのある人は試してみるとよいでしょう。また、緑茶の主成分のカテキンには発癌物質の働きを抑えるはたらきがありますので皮膚癌の予防効果も期待できるんです。それに緑茶ぶろは、緑茶の濁りのない薄茶色で、さわやかな香が浴室で楽しめ、リラックスして本当に気持ち良く入浴できますよ。 そりゃあいいですね。ぼくもさっそく試したいもんで、作り方を教えてくださいな。 材料は、いつも使っているお茶の出がらしを使います。それをかぜ通しの良いところで乾燥させてください。ガーゼか木綿で袋をつくり乾燥させた出がらしを詰め込み、外にでないように紐で口を結びましょう。あとは沸いたお湯に浮かべたまま入浴するだけです。入浴中にお茶の入った袋で顔をマッサージするのもよいでしょう。また、残り湯は翌日拭き掃除に使うこともできます。板の間を拭けばすべすべしますし、窓ガラスを拭けばよごれがつきにくくなります。ただ捨ててしまう前に一度お試しください。 |
|
第8回 緑茶の種類篇 | ||
![]() |
この間の緑茶ぶろだとか、お茶のおいしい入れ方とかとても参考になってます。でもひとつ疑問に思ってたんですが、緑茶の中にも煎茶とか抹茶とかいろいろ種類があるけれどどんな違いがあるんですか? そうですね、お茶にはいろんな種類があって値段も大きな違いがありますよね。まずは最も生産量の多い煎茶ですが、煎茶は露地ものといって、太陽の光をそのまま浴びて育ったお茶の葉を使うんです。摘んだ葉は蒸気で蒸した後揉みながら乾燥させて作られます。旨味と渋みが調和したのが特徴です。また、煎茶の製造過程でよりわけられた大きな葉や茎などを原料としたものが番茶の材料になります。また、その原料を強火で炒って香ばしい匂いをつけたお茶をほうじ茶と呼びます。煎茶に比べてカフェインやタンニンの含有量が少なくお子さま用として、また病人用としても多く飲まれています。 なるほど。ところで玉露とか抹茶とかはどんな違いがあるんですか? 玉露は、お茶のブランデーともいわれ最高級のお茶でとろりとした甘味と旨味が絶品で舌の上でころがすようにゆっくりと味わいたいお茶ですね。玉露は煎茶と違い葉を摘み取る前の20日間覆いをかけて日光を遮るんです。こうすることで光合成を抑えて渋みの成分が生成されるのを防いでいるんです。また、覆いをかける期間が短いものをかぶせ茶といいます。さらに、覆いをかけて 栽培したお茶の葉を石臼で挽いて、細かい粉末にくだいたものが抹茶です。粉を溶かして飲みますので、他の日本茶に比べて栄養分が豊富で茶の湯の場で作法としても楽しまれます。今お話したのが代表的なお茶の分類です。また、変わったお茶についても機会があったら紹介していきますよ なるほど、お茶は値段の高い安いで選ぶのではなく、目的やシチュエーションに応じて飲むべきなんですね |
|
第9回 たべる篇 | ||
![]() |
さて今回は抹茶についてお話しましょう。 愛知県は、抹茶の大産地なんですってね。 よく知ってますね。 僕は文化人ですからね。 西尾の方に行くと、たくさん茶園がありますものね。それじゃー、抹茶が健康飲料として、とてもすぐれていることは知っていますか? もちろん、知っていますよ。今まで、いろいろと教えてくれたじゃないですか。どんな緑茶でも体にいいんでしょう。 最近は、新聞や雑誌なんかでも緑茶の効能なんかを特集していますものね。でも、お茶に含まれている成分で、繊維とかビタミンEとかカロチンなどは、お湯に解けにくい成分なんです。 いつか話してくれた旨味のアミノ酸とか、渋みのタンニンは溶けやすいですか? そうです。溶けやすいから味に出るわけですね。ダイエットに食物繊維が有効とか、老化を防ぐといわれるカロチンなどの成分を茶殻に残したままでは、もったいないような気がしますよね。では、茶の含まれている成分を全部摂ろうとするとどうすればいいでしょうか? そのまま、食べれば良いんですよ。 どうやって食べます? ぼりぼり、かじりましょうかね。 そのまま、ぼりぼり食べるのは食べにくいでしょう。お茶の葉を粉にしてある抹茶は、そのまま食べるのといっしょでしょ。 そうですね。お茶の葉を石臼で粉にして、それをお湯に溶かして飲むんですからね。昔の人はよく考えたもんですね。 でも、いくら体に良いからって、おいしくなくては、毎日続けられないでしょう。抹茶は、そのまま飲んでもおいしく飲めるように覆いをかけて旨味をいかしてあるんですが、その分、手間暇がかかっているので、結構値段が高いんですよね。20グラムで千円とか二千円とかしますから、高いといえば高いですね。最高級のはもっとしますものね。 でも、お手前で出していただいた抹茶は、心も落ち着いて優雅な気分になり、なにものにも代え難いところはありますよ。 そうですね。お抹茶の作法は、日本の誇る文化でもあるわけですからね。のどを、うるおすだけなら、がぶがぶ飲めば、簡単ですけれど、そこを文化にまで高めた日本人は、たいしたものですね。さて、話は変わりますが、最近抹茶アイスとか抹茶ムースとか抹茶の入った食品が増えましたね。 僕も抹茶アイスは大好きですよ。ちょっと苦いのが良いんですよ。 昔は、抹茶といえば飲むものという固定観念があったんですが最近では、飲み物オンリーから色々な用途にお茶を利用しようと、素材としての抹茶の需要が増えてきて、当然生産も増えているんです。低コストで素材としての粉末茶をつくる製茶法の研究も盛んなんです。 永い歴史のあるお茶でも、新しい取り組みがあるんですね。 三重県の四日市市や鈴鹿市では様々な用途に使える素材用緑茶の生産量がとっても多いんです。 料理なんかに、使いやすい小さい袋入りの粉末茶なんかがあると便利でしょうね。 そうですね。抹茶入りのスポンジケーキとか抹茶クリームを家庭で作れたら便利でしょうね。できれば、レシピ付きで売っていれば、一度チャレンジしてみたいですね。 そう言えば、最近では、食べるお茶って言うのも見かけますよ。 お茶の葉を食べやすく、きざんで、ふりかけのように使うのもありますよね。食べることに関してはまたいつか、お話しましょう。 |
|
第10回 カフェイン編 | ||
![]() |
質問です。『こんにちわ!私は緑茶が大好きで真夏でも我家の冷蔵庫の中には、麦茶ではなく緑茶が冷えています。ところで、コ−ヒ−や紅茶にはカフェインが入っていますよね。緑茶にもカフェインが入っていると、聞いたことがあります。カフェインは体にとって、どんな効果があるのか教えてください。』ということで、今回は緑茶に含まれるカフェインについてお話しましょう。 カフェインというと、よく眠気覚ましにコ−ヒ−を飲んでシャキッとする、あのシャキッのもとでしょ?これがお茶にも含まれているんですか。 そうなんです。疲れた時や、目覚めが良くない時、一杯のお茶で心身が、シャキッとするのはカフェインによるもので、苦味のもとなんですが緑茶にも含まれていているんですよ。 眠気覚ましには緑茶もいいんですね。他にはどういった効果があるのですか? お教えしましょう。カフェインには、血管を拡張して血液の流れをよくする作用があるので狭心症の予防作用に良いと言われます。逆に、脳の細動脈では収縮作用があり、脳血流を減らしたり、高血圧性の頭痛を和らげます。また、利尿作用もあるのでむくみがある人にもよい効果がありその作用によって心臓も楽になるんですよ。その他にも持久力や耐久力を向上させるはたらきもあるんです。 カフェインというのは体にとって良い効果がたくさんあるんですね。それではどのようにすれば効果的にカフェインをとることができるんですか? 実は、お茶をいれるときのお湯の温度によってもカフェインの溶け出す量に違いがあります。熱いお湯を使うほどカフェインの溶け出す量が増えて、苦いお茶になります。一般に 玉露はぬるめの湯で 番茶は熱湯でといわれるのは、こうした理由からきているのです。 何だかあったか〜いお茶が飲みたくなってきましたよ。 じゃあ、あとでお茶でも飲んで心身共にリフレッシュしましょうよ。 |
|
第11回 保存篇 | ||
![]() |
今回はお茶の保存法についてお話ししましょう。いつもどのように、保存していますか? うちは、冷蔵庫で保存してると思いますよ。たいていはどこの家庭でも冷蔵庫に、ストックしている場合が多いんじゃないですか? そうですよね。不醗酵の日本茶は、湿度、酸素、光、熱、臭気に弱いんです。ですから冷蔵庫で保存するのがベストなんですが、お茶も新鮮な野菜と同じように冷蔵庫に入れずに、手に入った時にはすぐ消費するほうが味覚的にも栄養的にも最適なんです。 でもお葬式とか法事とか贈答品で余分にもらった時なんかはどうするのがいいんですか? 目安としては、1ヵ月以上保存する場合は冷蔵庫から冷凍庫へ移すのがよいでしょう。ただし、冷蔵庫や冷凍庫から取り出したお茶の入れ物をすぐに開けてしまうと、その温度差によってお茶は空気中の湿気を一気に吸収してしまうんです。 冷たいビール瓶を冷蔵庫から取り出したときにつく露と同じ現象なんですね。 そうなんです。そうなってしまうと、たちまちお茶の品質が悪くなってしまうんです。ですから、必ず常温に戻して入れ物を開けること、これが大切なんです。 よいお茶をもらったからといって、大事にしまっておくことはあんまり良くないんですね 最近では、窒素を封入して新鮮な香味を逃がさないように袋詰めしたお茶が売られているので、封を切らなければ半年や一年ぐらいは大丈夫なんです。お茶の香りはアルコール成分からできているので、当然時間がたてばたつほど蒸発して新鮮さはなくなってしまいます。したがって開封後は、夏なら半月以内、冬で一ヵ月が限度なんです。 じゃあ、一度にたくさん買い求めるのではなく、必要なときに必要な分だけ買うことが、新鮮でおいしいお茶を飲む一番いい方法なんですね。それでは、お茶を贈るときのポイントがあったら教えてくださいよ。 お茶は嵩の低い小さなものほど上等である場合が多いので、嵩の高い見栄えのいいものが必ずしもよいお茶とは限らないんです。人様に差し上げるものですからせめて、普段飲んでいるもの以上のお茶を選んだ方がいいでしょうね。 贈り物は贈る人の人柄をあらわしますからね。 |
|
第12回 大福茶篇 | ||
![]() |
今日は12月22日で今年もあとわずかになりました。 今年はなにかと暗い話題が多い1年でしたが来年は明るい1年にしたいですね。 そうですね、1年の計は元旦にあり と言われるようにお正月にはその年の家庭円満や幸福を願いたいものですよね。 そこで今回は新年最初の家庭行事としての 大福茶についてお話したいと思います。 大福茶?どんな字を書くんですか?これもお茶の種類なんですか? 大きな福と書いて大福茶と読みます。大福茶とは新年に初水をくんでお湯を沸かし、お屠蘇やお雑煮をいただく前に梅干しや結び昆布を入れて煎じたお茶を飲むんです。 何だか簡単にできそうですね。なにか由来はあるんですか? 大福茶の風習は宮中でも年中行事として行なわれているほど由緒あるものなんですが、その由来をたどると平安時代のことになるんです。当時京の都に疫病が流行っていたんです。とても多くの人が被害に遇いとても手の付けられない状況のなか、踊り念仏という実践的な宗教活動を展開し、多くの人々からも尊敬されていた空也上人という僧侶がいましてね、この上人が朝廷の命令で日夜懸命に祈願を繰り返したのですが一向に効果があがらず死者は増えるばかりでした。そこで上人は、京の町中を祈祷するだけでなく、薬用として梅干しを添えたお茶を荷車に積みながら病に怯える人々に施して廻ったんです。そうするうちに病気は治まり京の町に平穏が戻ったというはなしがあるんです。今から1,000年以上も昔のことです。 昔の病気はだいたいが赤痢だとかインフルエンザだったんですよね。今までにもお話してきたように、お茶の成分がそれらの病原菌に対して有効だったんでしょうね。 そうですね。その当時はお茶は現在のようにおいしい飲み物というより、薬として考えられていましたからね。空也上人もそこに注目したんでしょうね。こんなことがあって、時の村上天皇が毎年正月元旦にお茶を飲むようになり、天皇が飲むので王様が服用するお茶と書いて 王服茶と呼ばれ、それが転じて現在では大変おめでたいという意味で、大きな福と書いて 大福茶といわれるようになりました。 普段お茶に無頓着な方もお正月くらいはとっておきのお茶で大福茶を飲んで、すがすがしい新春を迎え、旧年中の邪気を払う。というのもいいんじゃないですか。 |
|
第13回 茶産業篇 | ||
![]() |
今回は、お茶のできるまでというテーマで摘みとられたお茶がどのように皆様のお茶の間まで届くのかというお話しをしたいと思います。 ぼくたちがお茶を飲めるのもとても多くの人々が努力したためなんでしょうねー。 そうですね。まず原料となるお茶を栽培する農家の皆さんが、愛情を込めて大事に大事にお茶の葉を育ててくれているんです。茶農家では苗づくりから始まり、気候などに注意しながら収穫期には刈り取りを行います。 少しでもおいしいお茶をつくるために工夫をしているんでしょうね。 そうなんです。その工夫の数々については、またの機会にお話ししますね。さて、刈り取られたお茶はその日のうちに製茶工場に運ばれて、蒸した後に揉まれます。最近は機械化も進み大規模な機械で作業が行われているんですよ。こうして出来上がった荒茶は、茶市場に運ばれ、お茶の形、色、香り、味などをよく調べて値段を決め、仕上げの加工が施されるんです。 茶市場ってどんなところなんですか? 例えば、三重県内には北から四日市市の水沢茶農業協同組合、鈴鹿市のJA三重経済連北勢茶センター、亀山市の亀山茶農業協同組合、南勢町のJA三重経済連南勢茶センターの4つが開設されていて、品質評価の他、生産者の育成指導やおいしいお茶を皆さんに飲んでもらえるように流通の整備や販売斡旋も行っているんです。そうしてできたお茶は、全国のお茶屋さんに運ばれ、各家庭に販売されているんです。 今日もどこかで伊勢茶が飲まれているんでしょうね。ところで、この番組を提供している伊勢茶推進協議会というのはどういう活動を行っているんですか? さきほど言いました4つの市場が中心となって、生産者から賛助金を基に伊勢茶の啓蒙活動を行っている団体なんです。伊勢茶をPRするために精力的でユニークな活動を行っているんですよ。 例えば? 毎年5月に栄で行われる『わんぱく祭り』への出展や本物のお茶が摘める無料茶摘み体験ツアーを開催したり、そうそうこの間は伊勢茶のキャンペーンで東京ディズニーランドへ行った幸運な人もいるんですよ。 ぼくも、行きたかったナー。来年は、ぼくも伊勢茶を飲んで応募しよう。 キャンペーンは毎年春ごろから行っていますので、興味のある方は新聞なんかでチェックしてくださいね。 |
|
第14回おさらい篇 | ||
![]() |
さて、4月ということで新入学・新入社と新しい環境の中で、生活をスタートしている人も多いのではないでしょうか。そしてこの番組”緑茶とひととき”も新茶のシーズンとともに帰ってきましたー! 私はこの時をずっと待ってたんですよ。日本茶っていうのは、ほとんどの人が毎日欠かせない飲み物なのに意外と知られてない話なんかたくさんあってずいぶん勉強になりましたからね。そのお陰で、わたしなんかすっかり自称お茶博士ですよ。 何だか頼りないお茶博士ですね。そんな宮地さんのために、それから今日初めて聴いている方にも分かりやすいように、今回は簡単に去年のおさらいをしましょう。まず、お茶というと大きく分けて緑茶・ウーロン茶・紅茶とありますがこれらのお茶は全て同じ種類の葉から作られます。では、何に違いがあってこのような違う種類のお茶ができるのか憶えていますか?宮地さん。 もちろん憶えていますよ。その違いはお茶を摘んでからの加工方法にあるんですよ。確か、緑茶の場合は摘んだお茶の葉をすぐに蒸してから乾燥させたもので、紅茶は完全に発酵して乾燥させたものなんですよ。それでウーロン茶っていうのはちょうど緑茶と紅茶の中間のようなものでしたよね。 その通りです。日本茶は自然の変化を起こさないようにするもので、お茶の持つ自然の性質を可能な限り活かすところに風味豊かな日本茶の特徴があるんです。そして、日本茶は原料や産地によっていくつかに分類されます。中でも、煎茶は日本で生産されているお茶のおよそ8割を占めています。5月頃に収穫される1番茶を原料とする高級なものもあれば、7月に収穫される2番茶を原料とするお値打ちなものもあります。 では、残り2割に当たるのが番茶、玄米茶、玉露、抹茶ということですね。これらのお茶はどんな違いがあるんですか? まず、番茶は8月以降に摘まれた三番茶あるいは、硬くなった新芽や茎などを原料として煎茶と同じ製法で作られます。玄米茶は番茶や煎茶に高圧で炒った米などを混ぜたものです。煎茶と玉露の違いは、栽培の段階から違いがありまして玉露の茶畑には覆いをかけて日光が当たらないようにするのです。そうすることで、渋みを押さえた旨味のあるお茶に仕上がるのです。そして、抹茶も玉露と同様に茶畑に覆いをかけるのですが、玉露と違う点は製造工程の最終段階で石臼で引いて粉末状にするという点です。 製法の違いや栽培方法のちょっとした工夫でいろんな味が楽しめるんですね。 それでは産地別は?と言いますとご存知の通り、三重県の伊勢茶や、京都の宇治茶、日本のお茶の生産高トップの静岡茶なんかが有名ですよね。 三重は静岡、鹿児島に次ぐ全国第3位の生産高を誇る名産地なんですよね。これは意外と知らなかった人も多かったのではないんですかね。 そうでしょうね。伊勢茶というのは、古くから茶産業が発達していた、伝統あるお茶処だと聞いていますよ。今回は前回のおさらいということでお届けしましたが、来週は知って役に立つあんな話、こんな話をたくさんご紹介していきますので楽しみにしていてくださいね。 |
|
第15回 扇風機のナゾ篇 | ||
![]() |
4月も半ばになり、いい陽気になってきましたねえ。おいしい新茶の収穫まであと少し。生産者のみなさんも摘み取りを前に今年のできばえに期待と不安でいっぱいなんじゃあないでしょうか。 ところで、みなさんはお茶畑で背の高〜い扇風機のようなものを見かけたことはありませんか?この地方にもたくさんのお茶の産地があるので見かけたことがあるのではないでしょうか。 この間も三重県の方にでかけて東名阪道を走っとったんですけど、茶畑がようありましたけど、ほとんどの茶園には必ずと言っていいほどこの扇風機がありますよね。だけど、お茶って意外と暑がりなんですね〜。デリケートなわたしと似ていて。 誰かに似ていて、というのは定かではありませんが、確かにお茶はデリケートなんです。ただし、暑がりということではありません。 では、あの扇風機はいったい何のためにあるんですか? あれは”防霜ファン”と言って、寒い時にお茶に霜が付くのを防ぐためのものなんです。 霜が付くとどうしていけないんですか? 霜は、寒い夜に気温が低くなると空気中の水蒸気が小さな氷の粒となって地面や葉に付くことを言いますが、これが朝になって太陽が昇ると温度が急に上がって、冷えたお茶の葉の細胞壁が壊れ、大切に育てられたお茶の新芽が枯れてしまうのです。時にはこの霜で新茶が全滅することもあったそうですよ。 冷凍庫に入れていたお肉を急に解かそうとするとへなへなになってしまうようなイメージなんですね。霜はお茶にとって大敵なんですね。 そうなんです。そこで茶農家では、霜の降りそうな日にこういった害を防ぐため、扇風機を回して冷たい空気をかき回し、温度が下がらないようにするんです。実際には、扇風機は電気で動いているため、霜が降りそうな低温になると温度感知機との連動で自動的に作動するしくみになっているんです。 お茶も最新の技術のもとで育てられているんですね。でも、こういったシステムが無かった頃はどうやって対策していたんですか?まさか、茶農家の人が早起きをしてうちわで扇いでいたわけじゃないんでしょ? さすがに、広い茶畑でそれは無理ですよね。防霜ファンが設置されるそれまでは、茶畑に煙を出して温めたり、朝方に水をまいたり、わらで粗く編んだものなどで畑を覆ったり、といろんな工夫をして霜からお茶を守っていたんです。 わたしたちのもとにおいしい新茶が届くのも、こうした茶農家の人々に大事に大事に育てられていたからだったんですね。生産者の皆さんありがとうございます。 |
|
第16回 日本のお茶、世界のお茶篇 | ||
![]() |
今日は、日本を代表する緑茶と世界を代表とする紅茶の違いについてお話したいと思います。 緑茶と紅茶じゃあ味も香りも色も全然違いますから、違いと言ってもピン!とこない人もいるかもしれませんね。 そうですね。以前にもお話したように、お茶の木には 緑茶の木とか 紅茶の木があるわけではなく製法によって緑茶になったり紅茶になったりするんですよね。 そうそう、お茶の葉を発酵させたのが紅茶になって、発酵せずにお茶そのものの風味を活かしたものが緑茶になるんですよ。それなら、なぜ発酵すればできる紅茶を日本では作らないんでしょうかね?お茶の葉は、いっぱいとれるんだから紅茶をつくる茶農家があってもいいのに。 そうなんです。そこに緑茶と紅茶の違いが秘められているんです。なぜ日本では紅茶が作られていないのか、それにはちゃんとした理由があるんですよ。主にインドやスリランカといった熱帯地方で作られている紅茶は、日照時間が長いために渋みの強い原料になってしまいます。この渋みの強い原料を発酵させることで、紅茶の良い香りがうまれるのです。もし、紅茶の原料で緑茶を作ろうとすると渋みが強すぎておいしい緑茶には仕上がらないのです。逆に、緑茶は日本のような冷涼な気候や風土が適しているので、旨味と渋みが自然に調和され、紅茶のように発酵させる必要がないのです。また、紅茶は発酵させると茶に含まれるビタミンCが分解されてなくなってしまうんです。ですから、緑茶は原料の茶がもっている成分を十分に活かすという意味で、優れた製茶方法を用いていると言えるんですよ。 紅茶も緑茶もその土地の気候と密接に関わっているからこそ、その土地でしか出せない味ができるんですね。 そうです。だから、どこで採れたお茶でもおいしい緑茶が作れる訳でもないし、どこででもおいしい紅茶が作れるわけではです。ですからこれからお茶を飲む時は、それぞれのお茶が育った自然環境なんかを想像して味わうと、今までと違った楽しみ方ができていいかもしれませんよ。 それじゃあ、お茶は世界中のどこでも緑茶は生産されているんですか? 少数の例外を除けば、だいたい東南アジア地方で生産されているんです。そして意外なことに、紅茶といえばイギリスといってもいいほどよく飲まれているヨーロッパではお茶の栽培が全くされていないんですよ。 だから、わたしたち日本人は摘みたての新鮮なお茶とか、新茶というものにこだわりをもつのかもしれませんね。新茶と言えば、摘取りまであとわずかじゃないんですか?待ちどうしいですね〜。 |
|
第17回 茶柱編 | ||
![]() |
今日は、やけに嬉しそうにしてますけど、何かいいことでもあったんですか? それが今朝、茶柱が立っていたんですよ。だから、今日はきっといいことが起こるんです。いいことってなにかな〜。楽しみだな〜♪ それで朝から、ひとりでニタニタと不気味な笑顔を浮かべていたんですね。 ぼくの愛くるしい笑顔に向って”不気味”とは失礼な。 ハイ、ハイ。その可愛らしい笑顔を思わず浮かべてしまったという茶柱ですけど、なぜ”茶柱が立つと縁起がいい”と云われているのか知っていますか? そりゃ〜茶柱が立つというのはめったにあることじゃないし、それだけめずらしいことだからじゃないんですか。ほら、四つ葉のクローバーだってそうでしょ。 はい。その通りです。そもそも、”茶柱”というのはお茶の茎もしくはお茶の葉の軸の部分のことで、茶わんにお茶を注いだとき、急須や土瓶の口から飛び出した縦に浮かぶお茶の茎をさして”茶柱”といいますよね。物理的にいうと、茎の一方が重く、重心が下の方にある状態、例えて言うなら釣りをするときに浮かべる”うき”のように縦に浮かぶことから比喩的に”茶柱”と呼んでいるんです。 また、”茶柱が立つ”というのは、”家の柱が立つ”ということを連想できることから縁起のよい、おめでたいことなんだということを聞いたことがありますよ。ところで、茶柱が比較的立ちやすいお茶ってあるんですか? 断言はできませんがあえて言うなら、むかしの煎茶や玉露といった高級茶は手作業でお茶の葉を摘み取っていたので茎が混入するということが無く、目で確かめながら丹念に手で拾って葉と茎を選別していたこともあって茶柱が立つことはまず考えられないほど確率が低いのですが、これに対して一番茶を摘み終わった後の晩茶には、茎や葉の軸がたくさん混ざっているので煎茶などに比べれば確率は高いと言えるでしょうね。 でも、急須や土瓶の注ぎ口の根元にはお茶の葉や茎が出ないように、金網やメッシュが付いているから、茎どころかお茶の粉さえ出ないようになっていますよね。 そうですね。いくつかの条件が重なり合った偶然の一致だからこそ縁起がいいと言われるんですよ。ところで、”茶柱が立つ”といえば何か思い浮べることはありませんか? ”茶柱が立つ”といったら、伊勢茶キャンペーンマスコットの”茶柱タツ”ばあさんしかないでしょう。 この茶柱タツさんの名前は、全国から一般公募で募集して命名されたそうですよ いろんなことをやっているんですね。 また、5月3日から始まる”わんぱく祭り”にも伊勢茶から出展しています。伊勢茶の試飲もできるので是非一度立ち寄ってみてはいかがですか。 |
|
第18回 急須の穴編 | ||
![]() |
宮地さん、お茶を飲むときには急須を使いますよね。ところで急須のふたに穴が空いているのをご存知ですか?そして何のために空いているのかお分りですか? まず思いつくのは、お茶を注ぎやすくするための空気穴ですよね。でもこの他にもふか〜い意味があるんでしょうね。 そうなんです。たしかに、空気穴という機能もあるんですけど、お茶を注ぐときの穴の向きにふか〜い意味があるんです。絵が描いてある急須をお持ちの方は、その絵柄を合わせてみてください。そうすると、その穴は必ず注ぎ口に向くようになっているんです。 お茶を注ぐときは、穴が注ぎ口に向いているのが正しい位置ということなんですか? それがそうとも限らないんです。玉露や高級煎茶など、良質のお茶を入れるときは、皆さんご存知のようにぬるいお湯でゆっくり抽出して注ぐので、空気穴は注ぎ口に向けて入れるのですが、逆に番茶や焙じ茶といった手ごろなお茶をたくさん入れるときは、サッと注いでも穴からお茶がこぼれてしまわないように、空気穴を注ぎ口とは反対側に向けるんです。 じゃあ、穴の向きを見ればどんなお茶を入れているのか一目で分かってしまうんですね。 そういうことですね。それからもう一つ暗黙の了解で、お客様の前でお茶を入れるとききこの穴が注ぎ口から90度以上離れていたら、もてなす人の”このお茶はたいしたことないんだから批評はしないでくださいね。”という客人への無言のメッセージで、反対に穴が注ぎ口に向いていたら良質なお茶ということですから、”このお茶はとてもおいしいですね。どこのお茶ですか?”なんて聞いてあげると、話に花が咲くのではないでしょうかね。 しかし、穴ひとつでこんなに深い意味があったなんて知りませんでしたね。でも、これからお茶を入れてもらうときに、その穴の位置に気をとられて普通のお茶でも穴が注ぎ口に向いているのを見てしまうとおいしーいお茶を飲んでいるような気持ちになるかもしれませんね。これでまた一つお茶を飲むときのひそかん楽しみが増えました。 宮地さんのように単純な人だとそうかもしれませんね。お茶に関する作法は知らなくても、みんなでおいしく飲めて、それによって和やかになれれば一番いいですよね。 |
|
第19回 茶がらの利用法編 | ||
![]() |
さて、今回は茶がらの利用法についていくつかご紹介しましょう。以前この番組でも茶がらを利用した”緑茶ぶろ”というのを紹介したことがありましたが、今日は”食べるお茶”としてのいろんな調理方法を紹介します。 家庭から出るゴミで一番多いのは、生ゴミと言いますから茶がらを利用することで、少しでもゴミの削減になればとってもいいことですよね。でも、出がらしのお茶の葉には栄養分が残っているんですか? 茶がらにも栄養分はたくさんあるんですよ。というのも、お茶として飲んだ場合、お湯で溶け出さない成分がいくつもあるんです。 例えばどういった、成分があるのでしょう? はい。例えば、発ガンを抑制することで話題になっている”ベーターカロチンや、過酸化脂質の防止に有効とされるビタミンE、それから食物繊維、クロロフィル、タンパク質など利用価値の高い栄養素がたくさん残っているんです。ですから、栄養の面でみてみるとお茶として飲むよりもお茶を丸ごと食べてしまうほうがはるかに有益なんですよ。 いままで、”ごみ”として捨てていた茶がらに、そんなにたくさんの栄養が含まれていたなんてもったいないことをしていたんですね。ところで、さっき言っていた茶がらを利用した調理方法というのは誰でも簡単に作れるんですか? はい。料理の苦手な人でも簡単に作ることができますよ。まず、調理に使う前に電子レンジで乾燥させます。電子レンジを使うことによって茶がらの色が損なわれないんです。そうして乾燥させた茶がらを小麦粉に混ぜれば、天ぷらやお菓子などいろんなバリエーションで利用することができます。それから、市販されているドレッシングと混ぜて生野菜といっしょに食べてもおいしいですよ。また、お茶の葉には臭いを消す消臭効果もあるので魚の煮物や豚肉をゆでる時にガーゼなどに茶がらを包んだものと一緒に加熱すると生臭さが取れてサッパリとした味に仕上がります。 アイディア次第でいろんな料理に使えるんですね。これだったらわたしにも作れるような気がしますよ。 それから、乾燥させた茶がらは、うれしいことに冷凍庫で保存ができるので使いたいときにいつでもすぐに取り出せるのですごく便利なんですよね。また最近では、お茶の成分を凝縮してカプセル化した健康食品なんかも発売されているのでそういうものを利用するのもいいでしょうね。 いろいろと便利なものがあるんですね。それにしても、お茶というのは飲み物以外に食べ物となったり、料理に混ぜることもできてしかも、飲食以外にも緑茶ぶろなんかにも利用できてこれほどいろんな利用方法をもっているものだとは知りませんでしたよ。 そうですね。”飲むお茶”と”食べるお茶”をうまく組み合わせて利用すれば、万全の健康管理ができるでしょうね。 |
|
第20回 お茶の値段編 | ||
![]() |
今日は一時台の”とびこみマイク”でも伊勢茶の生産地から新茶のレポートが入りましたが今日は、わたしたちがいつも口にするお茶がどのような過程を経て皆さんのご家庭にたどりつくのかそして気になるお茶の値段がどうやって決まるのかをお話したいと思います。 お茶の価格というと、お茶の善し悪しを判断するのはたいてい値段によるところが大きいんですよね。それから、店によって値段のばらつきがないように思うのですが、それはなぜなんでしょうか? はい。お茶の価格設定については、伝統的なシステムが昔からそのまま存続していて、一般のわたしたちには、なかなか分かりにくいところがあるんです。逆に言えば、それだけそのシステムが認められているということで、それが茶業界の特徴とも言えます。 どんな特徴があるのですか? はい。まず、お茶が皆さんの手元に届くまでには茶農家の生産者からお茶の取引を行なっている茶市場へ運ばれます。そして、ここで具体的な値段が決められます。普通、お茶の値段を決めるには色、形、香り、味を吟味して決めるのですがこれが結構難しいんです。ただ漠然とお茶を眺めているだけでは、善し悪しはなかなかみえてきません。長年、色々なお茶を比較して訓練を積まないと公正な価格を決めるだけの感覚は、身に付かないんです。 それでは、お茶のプロはどのようにしてお茶を見分けるのですか? 人間も最初は外見から判断するように、お茶もまずは外見からみます。そして、香りをかぎます。それから、お湯を注いでお湯の色を見て、味をみます。もちろんお茶は嗜好品ですから、時代によって好みが変わってきます。ですから、値段も人気のあるものは高めになってきます。また、最近では、色や味などを科学的に分析してそれを値段や品質評価の基準にする場合もあります。こういった過程を経たお茶は産地問屋、消費地問屋を経て全国のお茶屋さんへと運ばれ、皆さんのもとにたどりつきます。 なるほど、わたしたちのもとに届くまでにたくさんの人々が関わっているんですね。 そうですね。でも最近では、こういったシステムもスピード化が要求されるようになり、摘みたての新鮮なお茶が産地から直接ご家庭にお届けするということで、早く買い求められるといった方法がとられるようになってきたんです。 これは、消費者であるわたしたちにとっては、うれしいことですね。そう言えばいつもこの番組のあとで流れているCMの”産地直送の摘みたての伊勢茶をゆうパックでお届けします”というのも新しいシステムのひとつと言えるのでしょうね。 そうですね。お茶の価格決定は、最終的には小売店で決まるのですがそういった宅配や、通信販売の拡大によって、一概には言えなくなってきているのが現状ですね。また、新鮮で良質のお茶を低価格で提供しようと、お茶農家の協力のもとにつくられた直営店もあるので是非利用したいものですね。 わたしたち消費者が、お茶を買い求めやすいように組合員の方はいろいろな工夫を考えているんですね。わたしたちも、お茶に対する知識を深めてかしこく利用したいですね。 |
|
第21回 妊娠とお茶の関係 | ||
![]() |
さて、この番組に寄せられるハガキに”妊娠中でもお茶を飲んでも良いのでしょうか?”という質問をいただいていますが、妊娠中にお茶を飲むことについては、何も問題がないばかりか好ましいことがたくさんあります。今日は妊娠中に緑茶を飲むとどういった効能があるのかお話ししようと思います。 妊娠中、女性にとって悩みの種になるのはいろいろとあると思いますけど、その中でも特に”つわり”というのはすごくつらいものなんですよね? そうなんですよね。今まで平気だった臭いに対して敏感になって吐き気をもよおすようになって、体力的にも精神的にも弱くなってしまうんです。ひどい時には、少しでもつわりを和らげようと病院からビタミン剤をもらうこともあるんです。 つわりには、ビタミンが有効なんですか? はい。なかでもビタミンCは、つわりを和らげる効果が高く、緑茶の場合ですと抹茶や高級煎茶にはビタミンCが多く含まれています。バランスの良い栄養を必要とする妊婦さんですが、つわりなどがひどいと、必要な栄養素を充分に摂取することができなくなります。特にミネラル分の一つ亜鉛は栄養上重要な元素でこれが不足しがちだと低体重出生児が生まれる原因ともなります。鹿児島大学医学部の森一郎教授と研究グループからは 妊娠中は、抜群の亜鉛供給源となる緑茶を適度に飲んだほうが良いという報告もなされています。 なるほど。生まれてくる子供のためにもお茶は欠かさず飲みましょうということですね。 そうですね。そのほか、前にもお話ししましたように、緑茶の成分のカテキンは口中の殺菌効果があり、カフェインは脳を刺激し不快な気分を和らげます。このように妊娠中のヘルスケアに緑茶は最適なものといえるでしょうね。 |
|
第22回 大谷嘉兵衛大いに活躍編 | ||
![]() |
宮地さん、最近ヨーロッパでは緑茶が見直されていることをご存知ですか? ドイツでは人気が出ているらしいですよね。 そうなんです。緑茶の輸出が増えてきているんですよ。 紅茶やウーロン茶が輸入されていることは知っていましたけど、緑茶が輸出されているということは知りませんでしたよ。 そうでしょう。実は、ずーっと昔はたくさんのお茶が輸出されていたんですよ。 いつ頃からなんですか? 明治時代の頃からです。ペリーの来航以後開国によって貿易が盛んになってきました。 ”太平の眠りをさます蒸気船、たった四杯で夜もねむれず”という川柳を知っていますよ。この川柳は、じょうきせん(上喜撰)というお茶がありますが、これを四杯も飲んでしまったのでカフェインの影響で夜も寝られないよ、というお茶の上喜撰と船の蒸気船をかけた川柳なんですよ。 宮地さんよくご存知すね。明治時代というのは、外国から新しい文化や技術が次々と入り、輸出よりも輸入の方が上回っていたため、日本からは絹織物やお茶が輸出されるようになったのです。 やはり輸出先は、アメリカだったのですか? そうなんです。そして、この頃アメリカとの貿易問題に一役買ったのが三重県飯高町出身の大谷嘉兵衛という人なんです。 どんな事をされたのですか? はい。まず、お茶をどんどん輸出して利益をあげました。ところが、その頃アメリカは輸入されるお茶に高い関税をかけていたのです。 関税というと、輸入するときにかけられる税金のことですよね。 そうです。この関税がかかると、当然お茶の値段も高くなるので売上にも大きな影響を受けます。 日本でもお酒の関税が安くなって、輸入ワインがブームになったぐらいですもんね。 そうでしょ。そこで、大谷嘉兵衛さんは、船でアメリカへ渡り大統領に直々、関税廃止を訴えたのです。 行動力がある人だったのですね。結果はどうだったのですか? 少し後になってからですが、関税は廃止されました。 やるじゃないですか。貿易摩擦の解消を実現させてしまったのですね。 いつの時代にもたいした人はいるものなんですね。でも、その後紅茶やコーヒーとの競争で輸出は減っていってしまったのですが、最近また見直され始めているということです。 |
|
第23回 お茶摘み体験会編 | ||
![]() |
宮地さんは、お茶摘みをしたことがありますか? 今までお茶の話題をたくさんお話ししてきているのに、実際に茶畑でお茶を摘んだことは残念ながらないんですよ。そう言えば、新茶の時期になると、姉さんかぶりでかすりの着物を着た茶摘み娘の姿をした人が茶摘みをしているのをテレビなんかで見ますけど、今でも昔のように手摘みで収穫をするんですか? 最近では、手摘みで収穫することはほとんどなくなっています。それに、今ではかすりの着物で仕事をしている人もいません。ジーンズや活動しやすい服装で仕事をします。また、広い茶畑で一枚ずつ手摘みをしていたら、手間がかかりすぎてせっかくのおいしい旬の新茶でも旬を過ぎてしまいます。 そうでしょうね。茶産地へ行くと分かりますけど、ものすごく面積が広いですからね。あの広い土地で、一番おいしい時期に旬を逃さず収穫する必要があるんですから手摘みではとても追いつかないですよね。 そうですね。三重県の場合、お茶を収穫するのは年に3回あります。1回目が5月、2回目が7月、そして3回目が10月頃なんですが、今年の1回目の収穫はやっと終わったところなんですよ。 農家の人にとって収穫時期は、忙しくて大変なんでしょうね。 そうみたいですね。でも、一年間手塩にかけて育てた茶畑からおいしいお茶が出来上がった喜びはひとしおでしょうね。 じゃあ、今ではまったく手摘みはしていないんですか? 少しだけですがあります。日本では、毎年お茶の品評会というのが開かれているのですが、それに出品するためのお茶は今でも、手で摘んでいます。 そんなお茶を一度飲んでみたいですね。 ほんとですね。この品評会で最優秀をとったお茶は、なんと1sあたり20万円とか30万円とかするそうですよ。 それをなんとか飲む方法はないんですか? 残念ながら摘まれる量がほんのわずかしかないのでなかなか難しいんです。でも、自分でお茶摘みをしてそれを飲めるという企画ならありますよ。 それは本当ですか? はい。なんと、この番組を提供している伊勢茶推進協議会が、三重県などの後援を受けて9月23日に三重県飯南町のリバーサイド茶倉というところで 茶摘み体験会を開催するんです。 そこでお茶摘みができるんですか。もう少し詳しく教えてください。 当日11時ごろ現地に集合していただいて、本物の茶園でお茶摘をします。お昼はバーベキューを食べて、昼食後にはお茶の手揉みなども体験できるんですよ。 普通、なかなか体験できないことですよね。僕も行ってみたいなー。 そんな方のために、この番組をお聴きの皆様に抽選で3組ご招待しちゃいます。 |
|
第24回 お茶でないお茶編 | ||
![]() |
お昼は、何を食べました。 今日は、和食でしたね。 じゃー、宮地さんは、ご飯をなにで食べます。 茶碗に入っているのを箸でたべますよ。 そうですね。 変なこと聞きますね。 ちょっとまってくださいよ。 茶碗でお茶をのむんだったらわかりますけど、ご飯だったら飯碗(めしわん)でたべるんじゃないですか。 そういえば、なんか変ですね。 別に名前なんかどうでもいいやっと思えば良いんですけど、日本語って言うのはあ いまいなことがおおいですからね。 こんな事がほかにもありますよ。 たとえば? 杜仲茶とか麦茶とか飲むでしょう。あれってお茶じゃないですよね。 お茶は、お茶の葉を原料としたものをいう訳ですからそうですね。 それなのにだれも麦茶や杜仲茶の名前を聞いて不思議に思わないのはどうしてなんでしょうかね。 そりゃー、日本で飲み物といえばお茶じゃないですか。それだけお茶がポピュラー な飲み物っていうことですよ。 はい。昔、お茶はたいへん貴重なもので庶民の口にはそう簡単に入らなかったのです。そこでお茶の代用品として飲まれていたのが、”ヤハズ草”と呼ばれる雑草でよく道端や、堤防などに生えている豆科の一年草だったのです。これらは”浜茶”と呼ばれ庶民がお茶代わりに飲んでいたものなんですが、この”浜茶”はお茶と変わらない効用もあると言われていたため、日本国中に広まっていたそうです。 それから、最近の健康ブームにのって、薬草類が漢方薬として見直され注目を浴びるようになり、お茶として飲まれるようになったんですね。 そうなんです。ドラッグストアなんかに行ってみると、どくだみからオオバコ、センブリ、ハトムギ、柿の葉などたくさんの種類がありますよね。では、お茶ではないこれらの薬草にどくだみ茶といった”茶”という文字を付けるのはなぜか分かりますか? 薬草の名前がそのまま商品になるよりは何々茶とついていた方が飲みやすそうな気がしますけど。 そうなんです。何々茶とした方が商品価値があがると同時に、消費者に親近感を与えているんです。また、薬草なので毎日飲むというのは少し不安だという人でも安心して飲めるように、という意味が付け加えられているんです ”茶”という文字を拝借し安心感を持たせているわけですか。それだけ、お茶が日本人にとって根強く定着しているということなんですね。 そうですね。これらの薬草も緑茶と同じく、成分的にも優れた特性がありますが、なんといっても緑茶は栄養価値や精神面にいたるまで様々な分野でわたしたちの生活に欠かせない理想的な飲み物といえるのでしょうね。 |
|
第25回 深蒸し煎茶・かぶせ茶編 | ||
![]() |
さて、日本の緑茶というのは、普通蒸気で蒸してお茶の葉に含まれる発酵酵素の働きを止める不発酵茶というのを憶えていますか? はい。そうでしたね。でも、実際にはどれくらいの時間蒸すんですか? だいたい30秒くらいですが中には60秒近く蒸して製造する深蒸し煎茶というのもあります。 僕も飲んだことがありますけど、緑が濃いお茶でしたよ。 原料になるお茶の葉は一緒なんですが、普通の蒸し時間のお茶と深蒸しのお茶では見た感じも、味もだいぶ違ったものになります。蒸し方一つで、結構違いが出るんです。 深蒸しにするとどう変わるんですか? まず、見かけが全体的に粉っぽくなります。そして、長く蒸気にあてるので葉っぱはより柔らかくなります。このお茶を揉むんでみると、葉が柔らかいので粉っぽくなります。 ということは、葉の中身の成分や葉緑素が外に出やすくなるわけですね。 その通りです。ですから、緑色が濃くなってお湯に成分が出やすくなるわけです。 この深蒸し茶というのは昔からあったんですか? お茶の歴史からみると新しい商品になります。昔は、蒸す時間も短くて形もしっかりしたものが喜ばれたらしいんですが、そんなお茶はお湯を入れてから結構待たないと飲めなかったんです。ところが、深蒸しにすることで成分が出やすくなるために、早く飲めるようになったんです。 スピード化の時代にマッチした製法ということですね。 そうでしょう。お茶も時代に合わせていろいろと工夫をしているということですよ。それから、茶畑でもいろんな工夫がされているんですよ。 どんな工夫ですか? かぶせ茶というのを聞いたことがありますか? あまり聞きませんね。 そうかもしれませんね。それじゃ、玉露はご存知ですよね。 もちろんですよ。玉露は緑茶の最高峰ですからね。 そうです。玉露は収穫する前の一ヵ月間程覆いをかぶせて光を当てないようにします。そうすることで、まろやかでみどりの濃いお茶になるんですが、残念なことに一年に一回しか収穫できないんです。こんな事情から値段も高いんですよね。 手ごろな値段にはならないんでしょうかね。 そこで考えだされたのが、かぶせ茶なんです。実は、かぶせ茶は覆いをかける期間が短いんです。 どれくらいなんですか? 一週間から二週間くらいです。それでもお茶の味や色は玉露に近いものが出来るんです。そして、かぶせ茶は一年に二回収穫されるので、年一回しか収穫されない玉露に比べると値段が安いんです。お店で販売されている手ごろな値段の玉露は、このかぶせ茶を原料にしているわけなんです。 いろんな工夫がされているおかげで、おいしいお茶が飲めるんですね。 |
|
第26回 お茶は安心編 | ||
![]() |
お茶は相当昔からある飲み物だと思いますけど、そもそも発祥地はどこなんですか? はい。お茶の起源は、中国の雲南省といわれています。また、中国の伝説の皇帝、神農が解毒に使っていたという説がありますが、これをもとに考えると、お茶はすでに紀元前10世紀もしくは、20世紀には発生していたということになります。ちなみに、コーヒーの場合一説によると紀元前6世紀頃に、エチオピア高原で発見されているそうです。 コーヒーにも長い歴史があるんですね。でも、お茶にはかないませんね。ところで、日本にお茶が伝えられたのはいつ頃なんですか? はい。史実にはっきりと記されているのは奈良時代の頃ですが、それ以前からすでにあったと考えられています。また、日本へ伝えられてからお茶は、様々な場面で生活や政治、宗教をいろどっていたんです。 ということは、お茶は1千年以上も人々に飲まれ続けているわけですか。これだけ、長い間人々に飲まれているということは、単に美味しいということだけじゃなく体にもいいということなんでしょうね。 そうですね。健康維持に効果があるのはもちろんですが、逆に言うと害が無いとも言えます。薬の場合だと、新薬を販売するために莫大な費用と労力を使って安全性を確認するというのを聞いたことがあります。 ちょっと言い方が悪いかもしれませんが、人が実験台になって1千年飲み続けても人に悪影響を与えることがないどころか、健康維持に効果があることを多くの人に認められているということですよね。 それだけ、お茶がいかに安全な飲み物かを証明していることですよね。最近ではお茶の成分研究も進み、何が体に良いものかも分かるようになっていますが、それでもまだまだ研究途上のこともあるんです。 なるほど。昔には無かった環境ホルモンとかアレルギーなどが問題になっていますけれど、その時は安全だといわれていても時代が進み、新しい研究成果では安全性が疑問視されるということもありますから、安全な飲み物ということは大切なことですよね。 それに緑茶はおいしい。 ”良薬口に旨し”ですね。 お茶は薬ではありませんから、良薬という訳ではありませんが見直してみる価値のある飲み物ではありますね。最近では、色々な飲み物が売られていて選択範囲が広まっていますけれども、緑茶ほど飽きがこなくて深みのある飲み物もめずらしいですからね。 |
第27回緑茶とひととき | ||
![]() |
「緑茶とひととき」このコーナーは三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りします。 3ヶ月ぶりにこのコーナーで皆様に会えてうれしいですね。 そうですね。前回の最後の放送が去年の十二月でしたからね。だけど、2000年になってから今日まであっという間ですね。あっという間と言うくらいですから、この前までお話してきた内容は覚えていますよね。もちろんですよ。当たり前じゃないですか。お茶が日本に伝わってから私たち日本人の文化として発展していくまでのお話でしたよね。そうですね。当初は上流階級だけのものであったお茶が茶産地を中心に庶民の間にも広まり、それが大都市の中では茶の湯が精神的なよりどころとして認められていったんです。安土・桃山の戦国の世になると、お茶を飲む高級な茶器の流通を牛耳ったり、茶の湯の師匠として戦国大名に認められ、出世した茶人も数多く登場しましたよね。その代表があの有名な千利休なんです。豊臣秀吉に寵愛された彼は、茶会を開くだけでなく、その交友の広さを活かして他国の大名との外交に手腕を発揮し、参謀役として活躍したんです。ですが出るは打たれるというか、権力が強大になりすぎたがために主君である秀吉に切腹を命じられるという悲しい最期だったんです。というところまでが前回のお話でしたよね。 その通りです。その当時の人たちにとってお茶はそれだけ重要な意味をもっていたんです。しかしそれと同時にその頃全く異質の文化が日本に入ってくるんです。何か分かりますか? それはキリスト教ですね。渡航技術の発達によってヨーロッパから数多くの宣教師がやって来ましたからね。 有名なのはイエズス会のフランシスコ・ザビエルですが、彼らはキリスト教だけでなく鉄砲やガラス工芸など様々な文化を伝えてきましたが逆に日本の茶の湯や中国でお茶に出会い、ヨーロッパに戻ってからお茶を広める役割も果たすのです。 なるほど。お茶文化がいよいよ世界に向けて発信するんですね。 そうですね。今後はそんなテーマで西洋と東洋の文化とお茶について紹介していきますから宮地さん、勉強してくださいね。 よろしくお願いしますよ。 |
|
第28回緑茶とひととき「布教活動と茶の湯」 | ||
![]() |
「緑茶とひととき」このコーナーは三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りします。 さて、今週からは西洋人がお茶に出会った頃のエピソードについてお話しますよ。今、ヨーロッパなどでお茶がブームなっているという話はよく聞きますが、それ以前にはいつごろから西洋の人がお茶を飲むようになったのですか。 世紀の半ば頃からだといわれています。一般大衆に広まったのは世紀になってからで、世紀になってからはイギリス人の間で異常とも言えるほどお茶を飲んでいて原産国である中国と戦争になってしまうほど、生活に浸透していったんです。 お茶が引き金となって戦争が起こったんですか。怖いですね。 この戦争はみなさんもご存知の『アヘン戦争』で人類史上最悪ともいわれるものでした。これについては時代を追いながらいずれ紹介することにして、今回は西洋にお茶が伝わった頃についてお話をしますね。以前にも言いましたが、世紀の後半は織田信長や豊臣秀吉など戦国大名が茶の湯を好んで、大規模な茶会を催した時代でした。ですから当時キリスト教の布教のために来日していた宣教師たちは茶の湯に触れることができたのです。 なるほど。そこで異文化に触れたことによって多くの記述が残されているんですね。 そうなんです。今回は『ヴァリニャーノ』という宣教師の著書から外国人が見た茶の湯について紹介します。ヴァリニャーノという人はイエズス会布教のアジア地域責任者として日本の他、インド、マカオ、中国などで活躍した人です。 彼が日本に来たのは1578年といわれ、九州の大名達をキリスト教に帰依させ、織田信長にも布教を許されて安土の城下町にも教会や神学校を建てたんです。さらに彼は、日本人が初めてヨーロッパを訪れることになった『天正少年使節』の企画者としても有名な人なんですよ。 なるほど。異国の日本に来ても大変な活躍をした人だったんですね。 そうですね。ヴァリニャーリは、周りの人を惹きつける魅力的な大変興味深い人物だったそうですよ。またそれだけではなく、日本人の信者から信頼を受けるためにあるものに注目をしたんです。 それは何ですか。 ズバリ、茶の湯です。 なるほど。郷に入っては郷に従えという通り、日本人の心のよりどころである茶の湯を理解することで、キリストの教えの尊厳と信者からの信頼を得ることになったんですね。 そうですね。彼は他のイエズス会の宣教師にも茶の湯を理解するように指示をしていたようです。それについて粁的なお話は次回お伝えしますのでお楽しみにしてくださいね。 |
|
第29回緑茶とひととき「宣教師と茶の湯」 | ||
![]() |
緑茶とひととき」このコーナーは三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りします。先週は戦国時代のキリスト教宣教師の布教活動と茶の湯の関わりのさわりについてお話したところまででしたよね。 この間の話を聞いて思いましたが、はるか遠い異国の地に行って自分たちの教えを認めてもらうのは並たいていのことではないですよ。 そうなんです。そこで、東洋のキリスト教の布教活動の責任者であったヴァリニャーノという宣教師は日本人の信頼を得るために、茶の湯を理解するように他の宣教師たちにも勧めたんです。 まずは、日本の心を理解して、日本人からも好かれるようにということですね。 では、具体的にはどのようなことをしたんですか? 神父たちの住む家に日本式の茶室を設けさせたんです。さらに、お客様が訪ねて来た時には無礼のないように振る舞うよう教えました。これはつまり、武士や禅僧などは茶の湯を通してとても立派な生活態度を身につけていましたのでそれらの人達と対等に振る舞うことで尊厳を保つように心がけさせたのです。 なるほど。神父さんの家に茶室を設けるようにさせていたことからも、当時の上流階級の人々の家にも茶の湯を行う場所があったということなんですね。 外国人の残した記述から日本の生活の様子がうかがえるというのはよくあることですね。ただし、このヴァリニャーノという人もお茶そのものについては十分に理解してはいなかったということで、お抹茶は『飲み水に投げ入れる、ある植物の粉末』と表現するのにとどまっているんです。 この頃は西洋人にとってお茶の葉は全く未知のものだったから無理もありませんね。 また、彼は日本人の習性についても記述しています。それは、日本人は自分たちの常識通りに物事が進まないと気分を害し、かえって反感をかってしまうということです。例えば、客として自分の家に来た人に対しては上等なお酒やお茶を用意して、敬意をはらって対応するように注意すること、と言っています。そのためにも宣教師の家には上等なお酒やお茶がいつも用意してあったそうです。 今でもお客様が来るとまずはお茶を出すことが習慣となっていますが、当時はそのお茶ひとつで、無礼な振る舞いとして喧嘩になったりしたんですね。 現代に通じるお茶のもてなしに皆さんもこだわってみてはいかがでしょう。でも、お茶は必ずしも高ければ良いものというわけではありませんのでT・P・Oに合わせて、気持ちを込めて利用していただくのがいいですね。 |
|
第30回緑茶とひととき「宣教師と茶の湯」 | ||
![]() |
「緑茶とひととき」このコーナーは三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りします。 前回は『ヴァリニャーノ』というキリスト教の宣教師が、日本人に受け入れられるために茶の湯を利用したというお話でしたよね。 そうですね。『郷に入れては郷に従え』というやつですね。その当時の日本人の中で心のよりどころとなっていたものを実践する姿勢は見習いたいものですね。 しかし、西洋人たちにとって日本のお茶は全く未知のものであって相当な苦労があったようですよ。そりゃあ、はっきり言って宣教師たちも内心ではお茶はまずいと思っていたんでしょうね。残念ながらその通りなんです。中にはお茶をとてもおいしいものと感銘を受け愛飲していた宣教師もいたようですが大部分はしょうがなく飲んでいたといっても差し支えないでしょう。なにしろ宣教師たちに茶の湯を理解するように指示したヴァリニャーノ本人でさえ、お茶のことを『まずい飲み物』と公言していたようですから。 抹茶のあの苦さがダメたったんでしょうね。甘いもん無しではつらい人も多いでしょうそのようです。お茶の中に砂糖を入れたり、一緒にだされるお菓子なんかをつまみながら飲んでいたようです。 涙ぐましい努力が偲ばれますね。 余談になってしまいますが、当時西洋から伝わったものの一つにぶどう酒があって、宣教師たちも好んで飲んでいたようですが、すぐにおおぴっらに人前で飲むことができなくなってしまったようです。なぜだか分かりますか。 そりゃあそうでしょう。当時の日本人からしてみたら赤い飲み物なんか見たこともないわけで、そんなものをおいしそうに飲む人に対しては距離をおいてしまいますよね。 それだけではなく、赤色は血をイメージするのであたかも人間の生き血を飲んでいるかのごとく思われ、迫害をうけることもあったようですね。 そんなことになってしまえば、これまでの努力も水の泡ですからね。好きなお酒も飲めず、好きでもないお茶は飲まなきゃいけないなんて宣教師も当時は大変だったんですね。 しかしそこまでしても耐えてこられたのは、キリスト教の教えを広めたいという強い意志があったからだったのでしょう。それから宣教師たちはお茶そのものに対する研究も進めていたようです。お茶の持つ覚醒作用などに気付いており、眠気覚ましにお茶がいいということも当時知っていたようです。 ますます感心してしまいますよね。 |
|
第31回緑茶とひととき「千利休と茶の湯」 | ||
![]() |
先週は、茶の湯の儀式とキリスト教の儀式にはいくつか似ているところがあるというお話しでした。 はい。茶道は、日本の伝統的な文化だと思っていましたが、キリスト教の影響を受けていたと思わせる事実には驚きでしたね。 そうですね。ただし、似ているとは言っても、茶の湯は宗教ではないので、お茶を飲むという形式的な行為そのものには意味はなかったわけで、日本特有のわび・さびの考え方を取り入れることではじめて、文化としての茶の湯になっていったわけですね ところで、前回のお話しの終わりに、千利休がキリシタンではなかったのかと思わせる興味深いエピソードがあるということでしたがどんなことなのでしょうか はい。茶の湯を通して秀吉に対してさえも影響力が増した利休は、最期にはその秀吉から切腹を命じられ、自ら命を絶ってしまうのですが死の直前、親しくしていた友人や弟子たちを招き、最後の茶会を催したといわれているのです。 なんだかキリストの『最後の』みたいな話ですね。 そうなんです。キリストは、弟子の裏切りにより十字架にかけられてしまいますがその前の晩に十二人の弟子たちを集めて食事をしたのが最後の晩餐でしたよね。また、利休の弟子たちで『利休』と呼ばれる七人のたちがいましたが、一般的に挙げられる七人以外にも弟子が何人かいたそうでその人たちを合わせるとなんと、十二人になるんです。 じゃあ、キリストの弟子の数と同じですね。 そうなんです。 何だか今までの話を聞いていると、利休はキリストの生まれ変わりのような気がしてなりませんよ。 そうですね。ただ、キリスト教では自殺をすることは禁じられているので、利休が自ら命を絶ったことからキリシタンではないとする見方が強いようです。利休七哲にしても後世の人が作ったものですし、利休とキリストが似ているのは単なる偶然なのかもしれませんが、何か二人を結ぶものがあるように感じますよね。 |
|
第32回緑茶とひととき「茶の湯の魅力に」 | ||
![]() |
はい。以前、宣教師がキリスト教を日本に普及するために、茶の湯を通して広めていたという話をしましたよね。今日は、その中でも日本での布教活動に並ならぬ意欲を燃やしていた、あるフランス人の話をしたいと思います。 いったいどんなフランス人だったんですか。 この人は、“アレクサンドル・ド・ロード”という神父さんで、マカオに滞在している間に日本でのキリスト教布教活動に備えて日本語の勉強とともに、お茶の研究をしていたんです。 しかし、研究に没頭するうちにすっかりお茶の魅力にはまってしまったようで、本国であるフランスに戻ってから『シナおよびオリエントの諸国における旅行と布教』という論文の中でお茶の効用について論じているんです。 ミイラ取りがミイラになってしまったんですね。でも、ヨーロッパで飲まれているのは紅茶ではないんですか。 はい、そうなんですが彼が研究していたのは緑茶で、さらに当時日本の茶の湯で用いられていた抹茶と中国での煎茶との違いも理解していたんですよ。ヨーロッパで紅茶を含めたお茶が爆発的に広まっていくお話はまた後日紹介します。 なるほど、それでは彼は緑茶の持つ効用についてどこまで知っていたのですか。 そうですね。まず、彼はお茶の効用について大きく3つ挙げています。一つ目は、頭痛がする時にお茶を飲むと多少楽になったり、夕食後にお茶を飲むと眠け覚ましになるということも感じていたそうなんです。 確かに、お茶に含まれるカフェインには眠けを覚ます作用がありますし、疲労回復にも効果があるんですよね。 またそれだけでなく、ロードは胃の負担も軽くして消化を助けることにも気付いていたのです。これは、渋味の成分であるカテキンの作用で、胃液の分泌を促し、消化酵素を調整するので、ストレスで荒れた胃を保護してくれるのです。 科学が発達していないこの当時にここまでキリスト教の布教活動をしながら的確に緑茶の効用に着目していたなんて、彼は相当熱心な人だったんですね。 そうですね。また、腎臓を清める作用があるので痛風に効用があることにも触れていたので、フランスでも注目を浴び、やがてヨーロッパでは上流階級の間で一躍お茶が脚光を浴びたそうなんです。ロードはとても名高い宣教師だったので特に影響力が大きかったんです。 宣教師としてキリスト教を広めるつもりが、ヨーロッパでお茶を広めるのに一役かってしまったわけですね。 そんなロードさんもこれだけ緑茶について研究して日本へ行く準備をしていたのに、いざ出国する直前になって日本国内のキリスト教弾圧によってついには日本に行くことは、かなわぬままに終わってしまったのです |
|
第33回緑茶とひととき「お茶とアヘン戦争」 | ||
![]() |
先週は、フランスで緑茶が注目されはじめて、やがてヨーロッパ全土にも広まっていったというお話でした。今日は、そのヨーロッパで流行った緑茶がとんでもない事態を巻き起こしたお話をしたいと思います そもそも、そこまでヨーロッパで緑茶が流行った理由って何だったんですか。 もともとヨーロッパの人々にとって中国や日本は、エキゾチックで古い文化を持つ謎に満ちた国という概念が定着していたため、東洋生まれの飲み物として人々から注目を集めたのだと考えられます。最初は、オランダが独占的に緑茶の貿易を始めていたのが次第に輸入量が年々増加していき、その後イギリスも茶の商品性に注目し始め、独自のルートで輸入を始めるようになり、お茶の人気はあっという間に大ブレイクしたのです。 でも、はるか遠くから運ばれるんですからそれだけ費用もかかるし、庶民にとっては高価なものだったんじゃないですか。 そうなんです。長距離の輸送に加えて関税がかかるため非常に高価なものだったので当初は、宮廷を中心に社交の場で用いられる飲み物として、もてはやされていました。 それでは、どうやって庶民にお茶が飲まれるようになったのですか 緑茶がイギリス人の間で普及してきたのは、緑茶という飲み物が食事と相性が良いことや、ラックスができること、体にも良い効果があるといった様々な利点があることから広まっていったのです。 お茶はヨーロッパの主婦たちの心を掴んだということですね。家庭で定着すれば間違いなく需要が増えますよね。 そうなんです。そしてこの急激なお茶の需要の増加によって、イギリスと中国の間で貿易摩擦が起ってしまったのです。お茶の輸入で貿易赤字がどんどん増えていったイギリスが、その赤字を解消するためになんと、アヘンを薬と称して売り出したのです。その結果、1840年のアヘン戦争に発展していったというわけなんです。 中国でお茶がたくさん輸出される度に、イギリスからアヘンが流れていたなんてひどい話ですよね。 そうですね。でも、お茶の普及が戦争を引き起こしてしまうなんて、世界においてもお茶の影響力は絶大だったんですね。 |
|
第34回緑茶とひととき「お茶とアメリカ独立戦争」 | ||
![]() |
緑茶とひととき。このコーナーは三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りします。 前回までは、緑茶が中世のヨーロッパで広まるなかで、そのお茶が原因となって世界を揺るがす戦争までに発展したというお話をさせていただきましたよね。 そうですね。お茶の輸出国である中国と、最も多く輸入していたイギリスとの間で勃発した『アヘン戦争』のことですね。それでこの戦争の結末はどうなったんですか。 最新鋭の軍隊で迫るイギリス軍に攻められ、中国はついにはかなりの不利な条件で条約を結ばされて戦争は終結するんです。 戦争には負けたけど、これでようやく中国でアヘンが蔓延することはなくなったんですね。 それがそうでもないんです。このころはイギリス人たちの趣向も『緑茶』から『紅茶』に移り変わってきて、中国国内でも紅茶の生産量が多くなってきていたんです。当然紅茶を求めて貿易は続けられていたんでアヘンの流入がやむことはなかったんです。後にインドの『セイロン』地方での茶産業が盛んになってわざわざ遠い中国からお茶を輸入する必要がなくなって、初めてアヘンの輸出が減ったんです。 極めて利己的に思える理由がまかり通ったんですね。 当時は力のあるものが正義の時代ですからね。さて、お茶が世界の歴史に大きな影響を与えた事件はもう一つあるんです。 それはどんな事件なんですか。 それは『ボストンティーパーティー事件』というんです。あまり聞いたことがない方も多いと思うんですが、アメリカ独立革命のきっかけとなった非常に意味のある事件なんですよ。 うーん。ティーパーティーとはなんだか穏やかな事件ですね。 とんでもない。これは自分たちの国の権利を守るために引き起こされた大暴動なんです。 これは失礼しました。ボストンとかアメリカ独立革命というからには、事件の舞台はアメリカですよね。でもアメリカというと僕のイメージではコーヒー全盛という感じがするんですけど、ちょっと意外な感じがしますね。 それもそうでしょう。でもこの『ボストンティーパーティー事件』の経緯を聞いてもらえばアメリカ人の趣向がなぜ緑茶からコーヒーに移り変わったか、その辺の事情も理解できると思います。時間が参りましたので『ボストンティーパーティー事件』のお話は来週にさせていただきます。 |
|
第35回緑茶とひととき「ボストンティーパーティー事件」 | ||
![]() |
「緑茶とひととき」このコーナーは三重のお茶をみなさまへ、伊勢茶推進協議会がお送りします。 さて、今日はアメリカ独立革命のきっかけとなったといわれる『ボストンティーパーティー事件』のお話しでしたよね。 はい。前回は話の途中でしたからね.それは1700年代後半のアメリカの出来事です。 その話の前に当時の状況をちょっとお話すると、その頃のアメリカではヨーロッパの影響を受けて、民衆の間でお茶が大流行していたんです。 当時のお茶は紅茶だったんですよね。 はい。主流は紅茶だったのですが、ヨーロッパと同じようにちょうどこの頃緑茶から紅茶に移り変わってくる時期だったのです。 もともとヨーロッパから渡った人たちがアメリカのフロンティアなんですから趣味や嗜好が同じなのも理解できますよね。 そうですね。さて、イギリスとフランスの間では当時アメリカの植民地の権利についての抗争が続いていましたが最後にはイギリス一国の植民地支配に変わっていきました。 そうしますと、どんなことがおきたんですか。 独占的な支配が可能になったイギリスがアメリカに対する統制を強化したんです。当時から様々な税金がアメリカには課されていたんですが、アメリカ人は税金だけは払ってもイギリスへの発言権などはなにひとつ保障されていなかったんです。そこにきて茶税と称する輸入税が課せられたから大変です。当時お茶はそれなりに高価なものでしたから民衆の不満が高まり、お茶を含めたイギリス商品の拒絶運動がおきたんです。 欲しがりません勝つまでは、といったところでしょうか。大好きなお茶を我慢してまで自分たちの権利を勝ち取ろうとしたんですね。 そうですね。そして1773年。ついに事件が起こるんです。ボストンの港にお茶を積んだ貿易船がやってきたんですが、多くの愛国者たちがこの船を襲って、積荷のお茶を残らず海に捨ててしまうんです。 もったいないですねー。当時の価値で言ったらものすごい損害だったでしょうね。 当然怒ったイギリスはこの損害を弁償するまでの経済的な制裁を科したんですが、火に油とはこのことでこの制裁に対する抵抗運動がアメリカの独立革命に発展したんです。 お茶が歴史にもたらした意味を改めて考えさせられますね。ところで独立後のアメリカのお茶事情はどうなったんですか? それが、一度習慣となっていた喫茶文化も、こうした事件から急速に覚めてしまったようです。そして、主役の座はコーヒーへと移っていったのです。 |
|
第36回緑茶とひととき「お茶の発明品」 | ||
![]() |
『茶とひととき』この番組は三重のお茶をみなさまへ、伊勢茶推進協議会がお送りします。」 先週はアメリカの独立にお茶が大きく関わっていたというお話でしたね。 そうですね。お茶を積んだイギリスの船をボイコットした『ボストンティーパーティー事件』をきっかけにアメリカでは独立への運動が活発になっていきました。 でもこの事件をきっかけにアメリカの中でのお茶の需要は急速に減っていったんだったですよね。 その通りです。お茶の需要は減ったんですが、細々とは飲まれていたようです。そしてそんな人たちの中から現在では当たり前となっている、当時としては画期的なお茶の入れ方が生まれたのです。 ここでいうお茶とは緑茶のことですか? 残念ながら日本のこころ・緑茶ではなく主流派となっていたのは紅茶なんですが、現在の緑茶の飲み方にも影響があるのでぜひ聞いてくださいね。 その画期的なお茶の入れ方がティーバッグの利用だったのです。」 紅茶だけでなく緑茶のティーバッグも見かけますがあれは手軽ですよね。 そうですね。これはアメリカのお茶の輸入業者が、見本のお茶を配るのに使ったところから始まるのですが、当時は錫の容器に入れて配られていたものを、この容器が高いので絹の小袋を使ってみたんです。そうしたところ、この小売業者の所へはこの袋だけの注文がくるようになりティーバッグとして使われるようになったんです。 金物の容器は高いですからね。そこでこの袋に入れて販売したんですね。 今でこそ当たり前ですが当時はこのティーバッグはものすごい驚きですよ。当時は容器に入ったお茶の葉を人数分に分け、さらにお茶を出した後の茶殻をポットから取り出す手間もありましたからね。その点ティーバッグならあらかじめ人数分に小分けされてますし、飲んだあとも茶殻の始末をしなくてすむので大好評だったようです。 なるほど、便利は格式にも勝るということですね。またたく間に世界中に広がったんでしょうね ヨーロッパではすぐにとはいかなかったようです。優雅なティータイムを愛するイギリス貴婦人にはなかなか受け入れられなかったようです。一般の飲食店を中心に広まっていき、家庭の中にまで入っていったのはそれからしばらく後のことになります。 格式を重んじるイギリス人らしいお話ですね。 |
|
第37回緑茶とひととき「明治時代の日本のお茶事情」 | ||
![]() |
前回は『ティーバッグ』の起源についてのお話でしたね。 1900年代初めにアメリカで生まれたティーバッグは紅茶だけでなく、緑茶を手軽にいれるひとつの方法として普及していきました。 ところで、最近は欧米の話しが多かったですけどこの頃の日本の茶産業はどーなってたんですか? このころ日本は明治時代で、まさに文明開化の真っ只中にありました。欧米から様々な文化が流入し、貿易も盛んに行われていたんですよ。 いつだったか神野さんが話してくれましたよね。当時は輸入が圧倒的に多くて、日本の輸出の増加に緑茶が一役買っていたんですよね。 その通りです。当時日本は物資に乏しく、輸出品として商品になりそうなものは生糸と緑茶くらいが頼りだったのです。そのために緑茶の生産に数多くの努力がなされたのですが、その陰で数多くの悲劇があったようです。 どんなお話しですか、教えてください。 その当時、日本の輸出先の多くはアメリカだったんですが、お茶の需要の伸びに生産が追いつかず、多くの女性がお茶の精製工場で働くようになったんです。 女性の労働というと生糸生産で女性が酷使されたお話しが有名ですけどもそのような感じだったんですか?」 そうですね。お茶の生産の最盛期は5月から9月頃なんですが、毎朝4時頃から過酷な労働が始まるんです。狭い工場の中の何百もの釜に火が入れられ、乾燥させたりする作業が厳しい監督のもとで続けられていました。 夏の暑い時期で、火がたかれているそんな狭い所で働いていたら誰だってすぐに倒れてしまいますよ。 そうですね。当然この過酷な状況に倒れる女性が続出したんですが、これらの工場の監督者に水をかけられたり、棍棒でたたかれたりして休むことを許されなかったようです。お茶の精製工場も悲惨な状況は、先ほどお話しにありました生糸の工場と変わりませんでした。 まったく人権を無視したひどい話しですが、こんなひどい労働条件に反発は出なかったんですか? 労働が苛酷な上に、賃金も非常に安かったようなんですが、その他にこれといってお金を稼ぐ手段がなかったのでどうしても仕事をしなければならなかったんですね。しかし、そんな彼女たちの悲しいまでの努力も空しく、日本産の緑茶は値段が徐々に下がっていき需要が減っていったようです。 こんな無茶な条件で生産されたお茶では品質も落ちてしまったんでしょうね。ところで現在ではどのようにしてお茶が作られているんですか 現在では、機械化が進み、また製造工程も効率化されています。でも、どんなに機械化がすすんでも、手作業によるお茶作りは大切にしていきたいものですね。 |
|
第38回緑茶とひととき「緑茶の今」 | ||
![]() |
緑茶とひととき。このコーナーは三重のお茶を皆様へ、伊勢茶推進協議会がお送りします。 さて、日本だけでなくヨーロッパやアメリカの歴史にも登場してきたお茶ですが今回は現在のお茶事情についてお話ししましょう。 最近はどのような事が起きているんでしょう。 今まで何度もお話してきましたが現在はお茶に含まれる成分の健康への作用が注目されています。 あー、確か緑茶の渋みのもとになる『カテキン』なんかは、体にいいということを聞きましたよね。 そうです。カテキンには、ガンや動脈硬化の抑制作用があるという研究報告が数多くされているんですが、特に医学の先進国アメリカにおいて緑茶が注目を浴びているんです。 へえー。 アメリカ人の平均寿命は、諸外国に比べるとちょっと短めで、またガンによる死亡率も高いのですが、多くの研究者がその原因を調べたところ食生活によるところが大きいのではないかということが分かってきました。また逆に、人間の体によいとされる様々な食品の作用を調べる『デザイナーズフードプロジェクト』という研究も行われ、その中でガン予防に有効な食品を40種類が選ばれたんです。 そうすると、その中に緑茶も含まれていたということなんですね。 そうです。この研究が各国のメディアやインターネットを通じて世界に発信されその関心の高まりとともに外国への緑茶の輸出も年々増加してきているんです。 まさしく緑茶は、国境を越えたヘルシードリンクになったんですね。 そうですね。日本とは食習慣の異なる国でも緑茶は人気なんです。そしてそんな人気にこたえるように緑茶がより手軽に味わえるような商品が数多く開発されているんです。 缶やペットボトルの緑茶のことでしょ。 はい。特に最近の新しい傾向として500ミリリットルのペットボトル飲料が大ブレイクしているんです。 あれは飲みやすくていいですよね。 「これには天然水やビタミン・ミネラルを含んだいわゆる『ニアウォーター』が果たした功績も大きいんですよ。もともと500ミリリットルサイズのペットボトルの需要はそんなに多くなかったんですが、このニアウォーターブームとともに500ミリリットルのペットボトルが数多く生産され、まさしくそんな時に飲料水メーカーもブレンド茶や緑茶を発売したのです。 なるほど。お茶もこの流れに乗ったということですね。 はい。ということでますます需要の高まりをみせる緑茶事情、今日この頃でした。 |